
「もうこの職場では続けられない!」
そう思って勇気を出して退職を申し出たのに、上司から強く引き止められてしまった……という人もいるのではないでしょうか。
「ここで無理ならどこに行っても同じ」
「あと半年だけ残ってほしい」
「給料を上げるから考え直してほしい」
など、退職を申し出た際にはさまざまな言葉で引き止められることがあります。
特に初めて退職する場合、「ここまで言われたら辞めてはいけないのでは?」と不安になってしまうこともあるでしょう。
しかし、退職するかどうかは自分自身の今後の人生にも関わる重要な判断です。
この記事では、退職を引き止める上司の心理や、よくある6つの引き止め常套句、それぞれの上手な断り方について紹介します。
さらに、しつこく引き止められた場合の対処法や、会社が退職を認めてくれない場合についても解説します。
本記事の内容
なぜ退職を引き止めるのか?上司の心理とは

退職を申し出たとき、なぜ会社や上司は引き止めてくるのでしょうか。
もちろん「優秀な人材だから辞めてほしくない」と純粋に考えているケースもあります。
一方で、会社側の事情として、
- 人手が不足する
- 後任者を探さなければならない
- 引き継ぎや新人教育が必要になる
- 部署の業務に影響が出る
- 部下が退職したことで管理責任を問われる可能性がある
といった理由から引き止めている可能性も考えられます。
特に、自分しか担当していない仕事が多かったり、慢性的に人手不足だったりすると、会社としては突然1人抜ける影響が大きくなります。
そのため、
「あなたがいなくなると困る」
と言われること自体は珍しいことではありません。
ただし、会社の人員配置や採用についてまで、退職する本人がすべて責任を負う必要はありません。
引き止められたからという理由だけで退職を諦めるのではなく、なぜ自分は退職したいと思ったのかを改めて考えることが大切です。
退職を引き止められても辞められる?

ここは退職を考えている人が特に気になる部分でしょう。
期間の定めがない労働契約の場合、厚生労働省は、労働者が退職を申し入れれば、原則として申し入れから2週間が経過した時点で労働契約が終了すると案内しています。会社側の承認がなければ必ず退職できない、というものではありません。チェック労働情報
ただし、会社の就業規則に、
「退職希望日の1か月前までに申し出る」
などの規定がある場合も多いため、まずは自分の勤務先の就業規則を確認しておくのがおすすめです。厚生労働省も、合理的な退職手続きが定められている場合には確認しておくよう案内しています。
≫参考・ろうきょうガイドブック|厚生労働省
また、契約社員など期間の定めがある有期労働契約ではルールが異なります。
有期契約では、原則として契約期間途中の退職には「やむを得ない事由」が必要となる場合があります。契約期間が1年を超える場合などには別のルールもあるため、有期契約の人は無期契約と同じ感覚で判断しないよう注意しましょう。
≫★チェック⇨退職、解雇、雇止めなど|厚生労働省
退職時によくある6つの引き止め常套句
それでは、退職意思を伝えた際に言われやすい引き止めの言葉を6つ紹介します。
実際に言われた場合に、どう返せばよいかもあわせて考えてみましょう。
1.「ここで無理ならどこに行っても同じ」
個人的には、退職時に言われるとかなり嫌な言葉の一つです。
退職理由を、
「あなたの我慢が足りない」
「どこの会社でも大変なのは同じ」
と本人側の問題に置き換えて、考え直すよう促すパターンです。
もちろん、本当に今後を心配してアドバイスしてくれている上司もいるでしょう。
ただし、職場環境や仕事内容、人間関係は会社によって大きく異なります。
今の会社が合わなかったからといって、次の会社でも必ず同じ結果になるとは限りません。
すでに退職の意思が固まっているのであれば、
「ありがとうございます。ただ、よく考えたうえで決めましたので、退職の意思は変わりません」
程度に返し、議論を長引かせないのがおすすめです。
相手の意見を否定する必要はありません。
「話は聞いたが、結論は変わらない」という姿勢を貫いたほうがスムーズです。
2.「穴が空くと困るから、あと半年・1年いてほしい」
人手不足の職場でよくあるのが、
「後任が決まるまで残ってほしい」
という引き止めです。
退職を申し出た側としても、同僚に迷惑がかかると考えると罪悪感を持ってしまうかもしれません。
しかし、
「あと3か月」
「次の人が入るまで」
と退職日を明確にしないまま延期してしまうと、さらに退職時期を延ばすよう求められる可能性があります。
本当に退職すると決めているのであれば、
「申し訳ありませんが、○月○日で退職したいと考えています」
と具体的な退職希望日を伝えるようにしましょう。
引き継ぎにはできるだけ協力しつつも、退職時期まで無期限に会社都合へ合わせる必要はありません。
3.「部署や担当を変えるから続けてほしい」
人間関係や仕事内容が退職理由だと伝えると、
「部署を異動させる」
「担当業務を変える」
と提案される場合があります。
ここで重要なのは、自分の退職理由が部署異動によって本当に解決するのかということです。
「仕事内容だけが理由で、別部署なら続けてもいい」
と思っているのであれば、再検討する余地はあるでしょう。
一方で、
「会社そのものを離れたい」
「別の業界に挑戦したい」
という意思が固まっているのであれば、部署変更では根本的な解決になりません。
その場合は、
「別の会社・職種で新しいことに挑戦したいと考えています」
など、現在の会社では実現できない退職理由を伝えると断りやすくなります。
4.「給料や待遇を上げるから残ってほしい」
退職を伝えた途端に、
「給料を上げる」
「役職を付ける」
「待遇を改善する」
と条件を提示されるケースもあります。
給与だけが退職理由なのであれば、条件次第では残ることを検討してもいいでしょう。
しかし、
- 人間関係
- 長時間労働
- 仕事内容
- キャリア
- 会社の方針
などに不満がある場合、給料が少し上がったからといって問題がすべて解決するとは限りません。
また、条件を提示された場合には「いつから」「どの程度」「本当に実施されるのか」も確認する必要があります。
すでに退職すると決めているなら、
「給与面だけが退職理由ではありませんので、退職の意思は変わりません」
とはっきり伝えましょう。
5.「3年は続けないと転職できない」
入社から3年以内に退職しようとすると、
「最低でも3年は続けたほうがいい」
と言われることがあります。
たしかに、短期間で転職を繰り返している場合、採用選考で退職理由について詳しく聞かれる可能性はあります。
しかし、
「必ず3年間働かなければ転職できない」という決まりがあるわけではありません。
仕事内容が合わない、働き方に問題がある、別のキャリアを目指したいなど、退職を考える理由は人それぞれです。
「3年」という数字だけを理由に、自分に合わない環境で無理に働き続ける必要があるのかはよく考えましょう。
転職活動では、
「なぜ退職したのか」
「次の会社で何をしたいのか」
を自分の言葉で説明できるようにしておくことのほうが重要です。
6.「社内でも顧客からも君の評価は高い」
「君は評価されている」
「辞めるのはもったいない」
と褒めながら引き止めてくるパターンもあります。
本当に評価してくれているケースもありますし、退職を思いとどまらせるために強く伝えているケースもあるでしょう。
評価されていること自体は悪いことではありません。
ただ、評価が高いことと、その会社で今後も働き続けたいかどうかは別の問題です。
せっかく評価してもらったことには感謝しつつ、
「ありがとうございます。ただ、今後のキャリアを考えて決めました」
などと返せば角が立ちにくいでしょう。
退職を引き止められたときの上手な断り方

退職の引き止めを断るうえで大切なのは、会社への不満を延々と説明することではなく、退職の意思が固まっていることを伝えることです。
たとえば、
「現職では経験できない仕事に挑戦したい」
「今後のキャリアを考えて別の業界へ進みたい」
「家庭の事情で現在の働き方を続けることが難しい」
といった理由のほうが話を進めやすいことがあります。
逆に、
「上司が嫌だから」
「この会社が嫌いだから」
という形で会社への不満を細かく説明すると、
「上司を替えるから」
「部署を変えるから」
など、新しい引き止め材料を作ってしまうことがあります。
すでに退職意思が固まっている場合は、
「いろいろ考えて決めたことなので、退職の意思は変わりません。」
という軸を崩さないことが重要です。
退職理由は詳しく話しすぎなくてもいい
退職を伝える際、
「納得してもらえる理由を用意しなければ」
と思うかもしれません。
しかし、退職理由について細かく説明しすぎるほど、上司側から反論される材料も増えてしまいます。
「今後のキャリアを考えた結果です」
「一身上の都合です」
など、必要以上に細かく説明せず、退職意思そのものを明確に伝える方法もあります。
退職日を明確にする
「辞めたいと思っています」
という相談の形にすると、
「それなら考え直してみたら?」
と話が進む可能性があります。
意思が固まっている場合は、
「○月○日をもって退職したいです」
と退職希望日まで具体的に伝えましょう。
厚生労働省系の労働局でも、会社側が退職を拒否するケースでは、単なる「退職願」ではなく退職日を明記した「退職届」という形で意思を明確にする方法が案内されています。
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
≫https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html
それでも退職をしつこく引き止められる場合は?

何度伝えても、
「認めない」
「後任が来るまで辞めさせない」
「退職届を受け取らない」
という対応をされるケースもあります。
このような場合は、まず自分の雇用契約が期間の定めがある契約なのか、期間の定めがない契約なのかを確認しましょう。
期間の定めがない雇用契約の場合、会社が退職を「許可」しなければ絶対に辞められないという仕組みではありません。
厚生労働省は、退職の申し入れ後、原則2週間が経過すれば労働契約が終了すると説明しています。
≫★チェック⇨退職、解雇、雇止めなど|厚生労働省
一方で、就業規則や雇用契約、有期契約かどうかによって確認すべき内容が変わるため、トラブルになっている場合は自己判断だけで進めないほうが安心です。
何度伝えても退職を認めてもらえない、上司と直接話すこと自体がつらいという場合は、退職代行サービスを利用する方法もあります。
ただし、料金や運営元、対応できる範囲はサービスによって異なります。
退職代行サービスの違いや選び方は、こちらの記事で詳しく比較しています。
会社が退職を認めてくれない場合の相談先

自分だけで会社と話し合うことが難しい場合は、公的な相談窓口を利用する方法があります。
代表的なのが、厚生労働省・各都道府県労働局の総合労働相談コーナーです。
退職を含め、労働条件や職場でのトラブルについて相談できます。
会社が退職届を受け取ってくれない、退職を認めない、損害賠償をすると言われたなど、自分だけでは判断しにくい状況になった場合は、こうした窓口へ相談してみましょう。大阪労働局なども、会社の同意がなければ退職できないわけではないことや、契約内容によって扱いが異なることを案内しています。
≫都道府県労働局所在地一覧
また、自分で会社とのやり取りを続けること自体が難しい場合は、弁護士や労働組合など専門家への相談も選択肢になります。
いわゆる「退職代行サービス」もありますが、運営主体によって対応できる範囲が異なるため、料金だけでなく、誰が運営しているサービスなのかも確認して選ぶようにしましょう。
上司と直接やり取りするのが難しい方へ
自分で退職を伝えることが難しい場合は、退職代行サービスを利用する方法もあります。
→ 退職代行Jobsが提供するサービスの案内
退職の引き止めについてよくある質問

退職を引き止められたら考え直したほうがいい?
引き止められたからといって、必ず退職を撤回する必要はありません。
一方で、会社側から提示された条件によって自分の退職理由が解消されるのであれば、一度考え直すこと自体は問題ありません。
重要なのは、
「引き止められたから残る」
のではなく、
「なぜ辞めようと思ったのか」
を基準に判断することです。
「人手不足だから辞められない」と言われたら?
人手不足であること自体が、期間の定めのない労働契約において退職を無期限に拒否できる理由になるわけではありません。労働局も「新しい人が見つかるまで、いつまでも退職を許可しないということはできない」と案内しています。
≫参考・都道府県労働局所在地一覧
ただし、円満に退職するためにも、可能な範囲で引き継ぎには協力しておきましょう。
退職理由に嘘をついてもいい?
無理に細かい理由を作る必要はありません。
会社への不満をすべて話す必要もないので、
「一身上の都合」
「今後のキャリアを考えた結果」
など、必要最低限にとどめる方法もあります。
相手を納得させるために複雑な嘘を作るより、退職意思が変わらないことを一貫して伝えるほうが重要です。
まとめ|退職の引き止めには「意思は変わらない」と伝えることが大切
今回は、退職を申し出たときによくある引き止めの常套句と、その断り方を紹介しました。
よくある引き止めとしては、
- 「ここで無理ならどこに行っても同じ」
- 「あと半年・1年いてほしい」
- 「部署を変えるから続けてほしい」
- 「給料を上げるから」
- 「3年は続けないと転職できない」
- 「あなたは評価されているから辞めるのはもったいない」
などがあります。
退職を申し出ると、会社側もさまざまな条件を提示して引き止めてくるかもしれません。
しかし、一番大切なのは自分がなぜ退職したいと思ったのかです。
引き止めによってその問題が本当に解決するのであれば再検討する余地はありますが、退職意思が固まっているのであれば、
「よく考えて決めたことなので、退職の意思は変わりません」
とはっきり伝えるのがポイントです。
また、会社が退職届を受け取ってくれないなどトラブルになっている場合は、一人で抱え込まず、総合労働相談コーナーなど公的な相談窓口も活用しましょう。

コメント